実は私も若い頃は剣道がオリンピック種目になっていないことを残念に思っていたのですが、今では剣道をオリンピック種目にするということには反対です。
色々な意見があると思いますが、恐らくこれからも剣道という種目はオリンピック種目にはならないと思います。未来のことはわかりませんが、今のところはそういう流れですね。
そこで、今日は
剣道が今後もオリンピック種目にならないであろう理由
について考えてみたいと思います。オリンピック種目になるということはメリットもあればデメリットもありますよね。今のところ、反対意見の方が多いということですが、あなたは如何思われますか?一度じっくり考えてみましょう。
オリンピック競技種目のメリットとデメリット
剣道愛好家の中でオリンピック種目にしたいと考える人は少数派だと考えていましたが、中にはオリンピック推奨派も居られます。動画の後半部分をご覧ください。
確かに、剣道競技がオリンピック種目に登録されれば多くのメリットがあります。例えば・・・
- 競技人口が増える
- お金が回る
オリンピック種目に登録されるというだけで、多くのメディアに取り上げられることになり、それだけ剣道というマイナーな競技も露出が増えます。となると、やはりスポンサーなんかがつきますよね。
最終的には剣道連盟が潤うと言うことに繋がります。そして、勿論世界的にも普及しますし、剣道を取り巻く環境も改善されることに繋がるでしょう。
しかし、剣道をオリンピック種目にするということへの反対意見が多いのはどうしてでしょうか。それは、メリットよりもデメリットが多いからだと考えます。
では、その反対意見を挙げてみましょう。
- 武道としての特性が失われる
- 勝利至上主義
- 商業主義
- 礼節を重んじない
- 競技人口が少ない
- 世界各国で剣道具を調達するのが難しい
- 競技場が確保できない
- ルールが解り辛い
- 勝敗が解り難い
- 審判員のレベルが低い
- 国際化により規則が変わる可能性がある
では、もう少し詳しく見て行きましょう。
オリンピック種目になれば武道としての特性が失われる?
全日本剣道連盟が剣道をオリンピック種目反対の最も大きな理由が
オリンピック種目になれば剣道が武道としての特性を失ってしまうのではないか
というところです。現在の剣道はやはり武道というよりもスポーツに偏り勝ちな部分が多いですよね。小学生にしても、中体連、高体連にしても、試合に勝つことに重きを置いている団体というのは多いのではないでしょうか。
しかし、まだ日本国内で行っている分には日本という土地柄と言うか、文化的な部分が多いので大きな問題というのは起こりませんよね。
それが国際化となった場合にはどうでしょうか。数年前の剣道世界選手権の映像を見たことがある方も多いと思いますが、試合を終えてから礼をしない団体があったり、審判員の判定に明らかに不服そうな態度を取ったりと目に余るところがありました。
前回の日本で開催された時にはそこまで酷い状態ではありませんでしたので、少しずつ改善されているようにも思えますが、これがオリンピックとなればどうでしょうか。
剣道がKENDOになり、どんどん一人歩きしてしまう。その結果として礼節なんてどこ吹く風・・・となってしまっては困りますよね。
剣道の場合、勝てばスポンサーから賞金が貰えるなんてことは絶対にありえません。しかし、オリンピック種目になることで、いつしかそんなことになるのではないでしょうか。
勝てばいい。
武道っていうのはそういうものではありませんよね。剣道愛好家なら理解して頂けると思います。
ですから、そう言う部分を大事にしていきたいという思いが強いというのが全日本剣道連盟がオリンピックに反対している最大の理由だと思います。
では、根本的にオリンピック種目になる条件は満たされているのでしょうか?
競技人口が少ない!オリンピック種目にはどのくらい必要?
実は、剣道人口というのは意外と多いことで知られていますよね。よく比較されるのが柔道です。
- 全日本柔道連盟・・・登録者数20万人
- 全日本剣道連盟・・・登録者数166万人
色々な文献を見ていると、国内の剣道人口は柔道人口の約10倍と書かれているところもあります。ちなみに、柔道に関して言えば、フランスの柔道人口は日本よりはるかに多い60万人だとか。凄いですね。
では、国際的な剣道人口はどうでしょうか。
国際剣道連盟(FIK)が設立されたのが1970年。今では57か国が加盟しています。2014年のデータでは、全世界の剣道人口は約250万人。結構多いですよね。
これだけ剣道が国際的に普及しているならオリンピック種目として登録されても問題が無さそうな気がしますが、オリンピック協会の取り決めはどうなっているのでしょうか。
夏季オリンピックの競技は、男子では4大陸75カ国以上、女子では3大陸40カ国以上で広く行われている競技のみ。
75か国以上で行われている競技という部分、微妙にアウトですよね。でも、本気でオリンピック種目として登録したいなら、普及活動に少し力を入れれば可能な数字のように思えます。
ちなみに、空手が行われているのは169か国ということなので、空手と比較すると剣道はまだまだという感じがします。
剣道が普及し難い理由としては、
- 道具が必要
- 剣道できる場所が必要
というところでしょう。場所に関しては、基本的にどこでも可能と言えば可能ですが、実際にオリンピックを開催するとなると、難しいのではないでしょうか。
大きな問題は道具ですね。竹刀や防具。道具が必要な競技は普及が難しいと言われていますが、その点でも柔道や空手に比べハードルが高くなりますよね。
そして、ルールが解り辛いという点もまた問題です。
ルールが解り辛いのは大きな問題!
剣道のルールは非常に難しいです。
試合審判規則の薄っぺらい小さな本を何度読んでも覚えられません。そして、咄嗟の判断に迷うことも多くあります。
全日本剣道選手権大会のテレビ中継なんかを見ていても、有効打突の見極めが難しいという場面は多々ありますよね。非常に難しいです。
一本が入った後でビデオのスロー再生・・・
なんてことも良くある話です。剣道における有効打突というのは、当たったかどうかというのが重要ではないように思います。それよりも重要なのは打つ前、それから打った後ですよね。
ですから、そのことが理解できなければ、もしもオリンピック種目になったとしても大きな問題となるでしょう。
そして、ルール改正、ルール改正・・・
幾度のルール改正を経て、武道精神はどこかへ行ってしまうように思えてなりません。この辺りも非常に難しい問題です。
オリンピックを見ていると、ルール改正が頻繁に行われていることに気が付きますよね。どこかの国が有利に見えれば、それを抑える為のルール改正をされます。それでいいのでしょうか。
また、審判員の質という部分についても難しいと思います。オリンピックとなると、審判員が日本人ばかり、日系人ばかりになることはないでしょう。しかし、質の高い剣道の審判ができる人を探すだけでも大変ではないでしょうか。
まとめ
今日は、剣道がオリンピック種目に!という反対意見について考えてみました。
では、ここで話をまとめてみましょう。
オリンピックと言えば、『参加することに意義がある』と言われましたが、実際そうじゃないですよね。どこの国でも勝つことを第一の目的として掲げているでしょう。
剣道は勝つことが目的ではありません。剣道の目的は人間形成です。
つまり、オリンピックの本質と剣道の本質が合わないということになります。
本当の意味のオリンピックなら問題が無いでしょう。しかし、現代におけるオリンピックはそうではありません。卓球の福原愛選手も「メダルを取らなきゃ意味が無い」とまで言っておられます。
実は、嘗ては剣道連盟も剣道競技をオリンピック種目にするということで働きかけていたそうです。しかし、今となっては反対の意見となっています。
これは私の推測ですが、先陣を切ってオリンピック競技になった柔道が歩んだ道を見ることで剣道関係者は考えを踏みとどまったのではないでしょうか。
個人的には日本の武道としての柔道は国際的なJUDOと似て非なる物という感覚です。柔道のことは詳しくわからないのですが、恐らく国内の大会と国際大会では雰囲気も技の質も違うのではないでしょうか。
剣道における全日本剣道選手権大会と世界選手権が全く違うように。
剣道が「より速く!より高く!より遠くへ!」という競技だったら良かったのかもしれませんね。面白味はないかもしれませんが・・・
Comment
わたしはオリンピック競技にすることに賛成です。
息子2人が剣道をやっていて、オリンピックで剣道を見たいと言っています。
剣道の格式や伝統を重んじる姿勢は理解できますが、もっと幅広い人に剣道を楽しんでもらいたいと思います。
剣道未経験者さん
コメントありがとうございます。
オリンピックで剣道が見たいという気持ちはとてもよくわかります。私自身も現在の日本の剣道がそのままであれば賛成です。
しかし、剣道未経験者さんも剣道の試合を見ていてお分かりいただけると思いますが、試合の判定がかなり曖昧だと感じることはないでしょうか?
オリンピック種目となるには、その曖昧な部分を誰が見てもわかるようにしなければならないと思います。この問題は簡単には乗り越えられないのではないでしょうか。
更に、現在では隣の国で勝手なルール改正が行われ、我々からすると「?」な部分が多々見受けられます。蹲踞もしない剣道ってどうなの?って感じです。
オリンピック競技になるということはそういう部分も受け入れなければならないということではないでしょうか。
やはり剣道がオリンピックなどで取り上げられるとしたら、ビデオ判定などが取り上げられて一本に対する基準もかなり変わってしまうのでしょうか。
ナルトさん、コメントありがとうございます。
ビデオ判定が取り入れられる可能性もあると思います。そうなれば審判員は要らないということになるかもしれませんね。
でも、そんなのが剣道なのか・・・という疑問が湧くことになるでしょう。
剣道は剣道の本来の姿を守り続けてほしい。
私は小学、中学と剣道やっていました。どうしてオリンピックがないのかと不思議でした。オリンピックがあれば、目指すところがあればと思っていました。
しかし、時が経った今なら反対される気持ちがわかります。剣道の本質は勝ち負けではない。精神の鍛錬、身体の鍛錬、礼節を重んじる人間形成こそが本質。
ですが、私の地域では教える方も親も子供も、勝敗により趣きを置いていたように思えます。
私が育った地域は街全体で剣道が盛んでした。そんな盛んな地域でも剣道の本質を子供たちに伝えられていない現実があります。
オリンピックで柔道選手が派手にガッツポーズをする姿を目にすると、残念な気持ちにもなります。
抑えられない気持ちはわかりますが、せめて畳の上にいる間はひかえてもらいたいものです。
武道をやったことがある方ならこの気持ちはわかると思います。
武道はスポーツでは決してないのです。
スポーツが悪いと言っているのではありません。
スポーツにはスポーツの、武道には武道の良さがあるということを理解してもらいたいですね。
スポーツとして世界に広めていくことに価値があるように、武道という文化を守ることにも同じように価値があると思います。
武道の本質が世界に広がっていくことを期待しています。
zoeさん、コメントありがとうございました。
全く同意見です。
しかしながら、子供に対して勝ち負け以外のことをきちんと教えるということは難しいですね。逆に、勝敗が最も解り易いので、結局保護者も指導者もそうなってしまうのかもしれません。
勝敗に拘ることが修行に繋がるのかなぁとも考えます。自問自答の毎日です。